( Who is gravitas & grace? / 004 ジョージア・オキーフ )
「自分が住みたいところに住むことが出来ない、行きたいところにも行けない、やりたいこともやれない、それに言いたいことさえ言えない。 学校や画家たちから習ったことは、私に描きたいものさえ描かせまいとする。そしてついに私はこう決心したのです。少なくとも私は自分の描きたい絵を描き、自分の言いたいことを言うべきだ」
それは1915年、ジョージア・オキーフが27歳の時に辿り着いた答えだった。
色彩に惑わされるのを避けるため水採用の絵の具箱をしまい、木炭だけ、黒と白の簡潔な世界で、あらゆる可能性を追求し始めたオキーフ。
そこには生涯のパートナーであり師であったスティーグリッツとの出会いが、大きな影響を及ぼしている。
自らが偉大な写真家であるばかりでなく、多くの新しい才能を見出し世に出したスティーグリッツの最大の功績は、ジョージア・オキーフという2つとない希有な個性を発見し、育み、昇華させたことかもしれない。
スティーグリッツ自身も、ジョージアを被写体とした多くの写真を残している。
それは、彼女がキャンバスに表現しようとしている心情を、カメラで印画紙に焼き付けようという試みだった。
スティーグリッツは、後にこう語っている。
「私はあるがままの人生を表現したいと思う。そうあるべきであるとか、そうあればいいと私が願う人生ではなく…」
スティーグリッツの写真の中で、いつも屹然と視線を向けているオキーフは、同じものを15枚以上持っているという白いコットンのドレスの上に、いつも黒い上着を重ねている。
ニューメキシコの強い陽射しを受けて、限りなくスタイリッシュに映るその着こなしは、実は描くという一点に向けて簡潔化され、究められた装いだったのかもしれない。
本当の自分を発見し、愛し、生涯を通して、勇気を持ち、可能な限り自分を成長させ続けること。
オキーフの生き方それ自体が、彼女の絵だった。
gravitas & graceは、花の胎内にアメリカを宿したジョージア・オキーフの絵画の中にある。
文:森 一起